絵本づくりの考察 8. 「キャラクター」

メリークリスマスです。

前回は、ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンの展覧会について書きましたので、今回はそこで感じたキャラクターについて考えてみます。

ムーミンファミリー(家族、種族)の、顏の要素は同じ形をしていますが、それぞれの役目(パパ、ママ、恋人)によって、髪型や持ち物、服(でも、ほとんど裸なんですが、、、)等で、違いを表現しています。また、日本一有名なファミリーのサザエさん場合も、髪型を坊主頭にするとカツオの顏に、オカッパにするとワカメちゃんなってしまいます。

絵として考えた時、どの要素によってファミリーに見えるのか、そしてキャラクターの役目を表す物は何なのかを、よく考えると面白い発見があり自分の作品づくりに役立ちます。

「ハリーのうつくしいむら」

作画/中田弘司

この絵は、印刷屋さんの仕事でカレンダー用に作ったキャラクターですが、カレンダー使用後は「PIBO」という無料の絵本アプリで、オリジナル絵本に描き直し、発表しました。

紙の絵本ではないですが、PC、タブレット、スマホのモニター上で表示し読み聞かせの音声も出せます。

このように現在では「キャラクター」というとは登場人物という扱いがされる事が多く、その見た目を重要視し、いろんな媒体に展開ができる事が特徴の一つです。

ただ本来「キャラクター」とは、そういう見た目のことだけではなく、「性格。人格。その人の持ち味。」という意味なので、特に絵本の場合は『性格』という部分が大きくなります。

『性格』とは具体的に「行動力」「慎重さ」「こだわり」「社交性」「誠実さ」「協調性」「劣等感」等(もちろん、他にもたくさんあります)の有無や強弱によって見えてきます。自分のまわりを見渡して、ある人は「行動力」はあるけれど「協調性」はないと感じると、その人の行動のパターンが見えてきます。例えば何か事件が起きた時、すぐに動くけれど一人でやって失敗してしまう等の行動は『性格』によってでてきいるので、知っている人はその結果に納得するのです。つまり『性格』は行動の原理となり「人格」も見えてきます。そして『性格』からの『行動』によって、『物語』は進んでいきます。だから『キャラクター』の設定によっての行動に、読者は納得するのです。

また、アートスクール大阪では「自己紹介絵本」という6見開きの絵本を作る課題があります。これは「ひな形(テンプレート)」が用意されていますから、それに合わせて考えます。前世での状況を設定し、生まれ変わった現世での自己紹介をします。ここで変わらない部分、この場合は転生する魂が自己紹介するキャラクターです。生きる世界が変わっても、変わらないもの(魂/キャラクター)によって物語の登場人物に統一感を感じます。

そして最後に、コロナでいろんな事が変わっても、いつものように一年は終わり、クリスマスはやってきます。
生活が変わった人も、変わらない部分があったと思います。変わらない状況、関係、それは何なのか?キャラクターを作るように俯瞰で眺めてみると面白いです。

では、今年ももう少し、
良いクリスマスをお過ごし下さいね。

絵本コース講師/中田弘司

絵本づくりの考察(各記事は、下記をクリックしてくださいね)

  1. 1.「起承転結」
  2. 2.「擬人化」
  3. 3.「シンプル」
  4. 4.「文字の表情」
  5. 5.「普遍性」
  6. 6.「目的」
  7. 7.「序破急(じょ・は・きゅう)」

 

 

 

中田 弘司

中田 弘司
Profile
制作事務所勤務デザイナーを経て、1989年よりフリーランス。
今までに幼児向け雑誌絵本等にて100話以上のお話の挿絵制作。
絵本をはじめ、「ビッグコミックオリジナル・増刊号」(小学館)表紙イラストや、
月刊誌「大阪人」にて歳時記や町歩きの画文の連載等、
壁画からキャラクターまで多様な作品を制作。
東京・大阪・神戸にて個展多数。主な絵本に「ぷぅ」( 作:舟崎克彦/ポプラ社 )がある。
Message
目には快感、心が楽しみ、気持ちを遠くに運ぶ
絵本やイラストを目指しています。
仕事での経験を生かし、一緒に考えながら、アドバイスをします。
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