マンガのデジタル作画でよくあるトラブルその1

こんにちは。マンガコースです。 以前のブログでもお伝えしましたが、ここ数年でマンガ制作ソフトの性能がとてもよくなったこともあり、今はネームからフルデジタルで、という方がかなり増えています。実際教室に通う受講生の方の中でデジタル作画をされている方の割合もかなり増えています。もちろんこちらに通うようになってからデジタル作画に取り組まれた方もたくさんおられるのですが、その際、似たようなことでよく戸惑ってしまわれることが多いように感じています。せっかく自宅で、教室でした作業の続きに取り組まれても、そのトラブルのせいで何時間も躓いてしまい、結局作業できなかった…ということもよく聞きます。そして後日教室でそのことを相談されるのですが、本当にちょっとしたことで躓いているだけなのですぐ解決することが意外に多かったりもします。

そこで今回は、デジタルモノクロマンガ作画初心者の方が良く遭遇してしまうトラブルをいくつかご紹介させていただきたいと思います。教室ではマンガ制作ソフト(株)セルシスの「CLIP STUDIO PAINT(以降略して『クリスタ』と表記)」をメインで使用していますので、そのソフトに限った出来事などもありますが、もしご自身が使われて戸惑ってしまったことがあれば、解決の参考になればうれしいです!

項目が少し多いので、まず今回は、

◆絵を拡大表示するとギザギザしている・ぼやけている
◆線が描けない
◆塗りつぶしが出来ない
◆トーンが貼れない

というトラブルについて、初心者の方がやりがちなパターンを紹介したいと思います。

◆絵を拡大表示するとギザギザしている・ぼやけている

 拡大率がかなり大きいと、モノクロ二諧調表示のレイヤーであれば、『ピクセル単位で白か黒か』で線が描かれているため、ギザギザ(カクカク)した線になります。ですがそれはとても拡大した時だけ見えるので、等倍で印刷した物で見た時にギザギザしていなければ問題ありません。またグレースケールやカラー表示の場合は逆に、かなり拡大すると線がぼやけているように見えます。これは線を滑らかに見せるためにぼかしている(アンチエイリアスがかかっている)ことが多いためです。これも等倍で印刷した時にぼやけすぎていなければ問題ありません。 ただ、そこまで拡大表示にしていない・印刷したらぼやけていた…という時があります。これは最初のキャンバス設定の時、解像度が低い、もしくは用紙設定がとても小さいサイズで設定されている可能性が高いです。特にスキャンで読み込んだ画像に描画する際、その画像のスキャン設定そのものの解像度が低い場合(72dpiなど、モニターだけで見る分には問題ないが印刷には適さない)によく起こっているようです。最終的に発表する媒体やパソコンの性能にもよりますが、解像度はカラーやグレースケールであれば300dpi、モノクロ原稿であれば600dpiは必要です。あまり高い数値に設定するとデータが重くなるのでやりすぎる必要はありませんが、あとで解像度を下げることは簡単に出来ますので、低い解像度に設定しないように気をつけましょう。

◆線が描けない

 教室では一番良くあるトラブルです。この場合原因が色々ありますので、良くやってしまうパターンの解決策をいくつか紹介したいと思います。

【ペンタブのペンを上下逆に使っている】

 意外に一番よくあるパターンです。ペンタブでよく使われているのがWACOM製品だと思うのですが、この製品のペンは、ペン先と反対側(テールスイッチ)が消しゴム機能にあてられている製品があります。そのため、ペンを持ち直したりした時に上下逆さに持ってしまい、消しゴム機能を使ってしまう時があります。もちろん消しゴムなので、線を描くことはできません。うっかり持ち間違えていないかどうか、確認してみましょう。

【白・または透明で描いている】  

 持ち方は間違っていないのに何も描けない、でも履歴を見ると何か描いていることになっている―――そんな時は、今自分が何色で描画しているか確認してみて下さい。うっかり白や透明を描画色として選んでいる時があります。これは自分ではそこを触ったつもりではなくても、何らかの動作をした際に選んでしまっていたり、スポイトツールで白色などを拾ってしまい、今まで『黒』だった描画色を『白』や『透明』に変更してしまっているパターンです。描けなくなった時は、『黒』で描画しているか確認してみましょう。

【モノクロ二諧調のキャンバスに薄い色で描いている】

  これも上記同様、描画色を黒以外の薄い色にしてしまった場合、例えば水色などカラーで見るとはっきり見えている色でも、モノクロ二諧調に設定されているレイヤーでは『白』と判断されて描画できていないように見えます(実際は白で描画されている)。モノクロ二諧調は白か黒かでしか描画できないため、グレーで49%以下の色は『白』と判断されてしまうためです。(カラー色の場合は、いったんその色をグレーに変換して(カラー写真をモノクロコピーした時のような感じ)、そのグレーの濃度で黒か白かを判断します。)  レイヤー設定をグレースケールにしておけば薄いグレーでも描画出来ますが、最終的に発表する媒体によってはグレースケールでは表示できない場合もあるので(大手の紙雑誌のモノクロページの場合、黒かそうでないかで印刷されることが多いため、グレーで描かれたものは途切れ途切れで汚くなったり印刷されない可能性があります)、最終的に原稿データをどうするつもりなのかを考えてレイヤーを設定しましょう。(電子書籍や同人誌印刷などであれば、グレースケールに対応しています。)

【選択範囲外に描いている】  

 これも、知らないうちに選択範囲を取ってしまい、しかし描画は選択範囲外でおこなっている為描けない、というパターンです。どこに選択範囲を取ってしまっているか確認しなくても、いったん『選択を解除』すればOKなので、ショートカットキーやメニューから選択範囲を解除してみましょう。

【枠線定規を利用している】

   クリスタを使ってマンガを描いておられる方が、よくやってしまうパターンです。枠線を、枠線定規を使って作成した後にその定規が他レイヤーでも使える状態にしたままの時、枠線に近い部分で描画しようとすると、その定規の影響で枠線が引かれている部分にしか描画が出来ないため、画面上では何も描けていないように見えます。ですが実際は枠線定規に沿って描画しているため、枠線のレイヤーを非表示にすると、今描画しているレイヤーに直線などが引けていることが確認できます。  枠線を引き終わった後(分割後)は、枠線定規自体は後で使うかもしれないので削除せず、表示しない(定規のマークに赤い×マークがつく状態にする)ようにしておきましょう。

【とても細い線を引いている】

  繊細な絵を描きたくて、ペン先の数値をとても小さくした場合、キャンバスの表示倍率が低いと線が細すぎて、モニターによっては表示できない場合があります。細い線を引きたいときは、キャンバスの表示倍率を上げてみましょう。ただしかなり拡大しなければ見えないような線は、印刷したりモニターで普通に見た時は見えない(飛んでしまう)可能性が高いので、それを承知で描き込むか、もしくは見えないのなら描かないようにするか、ご自身の好みで決めて下さいね。

【描画しようとしているレイヤーの上に、白塗りをしたレイヤーがある】  

   アナログで下描きやペン入れをしたものをスキャンした場合によくやる失敗です。 『新規レイヤー』で作ったレイヤーは透明のフィルムのようなものなので下のレイヤーが透けて見えますが、スキャンした画像の白は『塗りつぶした白』と同じで透けない画用紙のようなものなので、そのレイヤーより下のレイヤーが見えないのです。スキャンした画像のレイヤーは、一番下に置いておくか、上の方に置くのであれば、ペン線のレイヤーであれば、クリスタでしたら『編集⇒輝度を透明度に変換』にすれば白が透明に変更されますし、レイヤーの設定を『乗算』に変更してもいいでしょう(白黒原稿であれば線が黒なので、色を重ねても変化は出ないので)。  あとは上の方のレイヤーの修正をする時に、消しゴムで消さずに白で塗りつぶして(アナログ原稿のホワイトと同じ要領)いた場合、そのレイヤーより下のレイヤーで描画すると、上のレイヤーにある『白』のせいで、見えない場合があります。途切れ途切れで描画されている場合はこのパターンが多いです。白を塗っているレイヤーを探して(クリスタであれば、レイヤー選択で簡単に見つけることが出来ます)、そのレイヤーは下に移動するか、白を透明に変更してあげましょう。  線が描画できないパターンはデジタル初心者には本当によくあることです。原因は他にもまだいろいろ考えられるかと思います。けれど慣れてくればそういう失敗はしなくなりますので、頑張って下さいね。

◆塗りつぶしが出来ない

 ベタなどを塗りたいときに、例えばクリスタだと赤丸に斜線マーク(禁止マーク)がでてしまう場合があります。こういう時は、今現在選択しているレイヤーで利用できないツールを使おうとしている可能性があります。例えば、ベクターレイヤー(ベクターは線しか描画できず、面で塗る塗りつぶしは不可)などで塗りつぶしを行おうとしている場合などです。レイヤーにはいろんな特性がありますので、それぞれのレイヤーに適した作業を行うようにしましょう。

◆トーンが貼れない

 クリスタの場合、トーンはいったんそのキャンバス全体に画像が貼られ、マスクを利用してトーンが見える(貼っている)範囲を設定しています。トーンを貼った時のレイヤーの状態は、そのレイヤー表示内でレイヤーの画像を小さく表示している横にある黒い四角がマスクで、黒い部分がマスク(隠し)をしている状態です。マスクを使ったことがない方には、なかなかその特性が理解しづらいかと思います。  選択範囲を取ってからトーンを貼った時は、その選択範囲のところだけ白くなった(マスクされていない範囲)黒い四角がレイヤーに表示されます。もし筆などで塗るようにトーンを貼る場合は、その黒い四角を選んでから(黒い部分が二重枠になります)塗れば、筆で描くようにトーンが貼れます。ですが、他のレイヤーで作業をした後にそのトーンレイヤーに戻ってきた際、その黒いマスク部分でなく、画像素材(レイヤー表示の向かって一番左端の表示画像)をうっかりクリックしてしまった時、禁止マークが出てそのトーンが貼れなくなってしまいます。もし出来なくなったときは、自分がレイヤーのどこを選んでいるのか確認してみましょう。

 

  他にもご紹介したいよくあるトラブルはあるので、また次にご紹介させていただきたいと思います。少しでもデジタル作画初心者の方のお役に立てれば嬉しいです♪

 

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社大学経済学部卒業
大学在学中に漫画家デビュー。
以降、読み切り・連載作品を発表、コミックス出版を重ねる。
現在はフリーのマンガ家として活動中。
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小さい頃から、マンガを描くのも読むのも大好きで、今は趣味も仕事もマンガという大人になりました(笑) 特に読む方はジャンル問わずです。
好きな気持ちとやる気は、マンガ制作の大きな力になります。初めての方もレベルアップしたい方も、ぜひ一緒に頑張っていきましょう!
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