レーザー加工で版を作って摺ってみました! 題して「レーザー加工版画」!


 今年2回目のブログはアートイラストコースが担当します。
 今年もどうぞよろしくお願いします。

 アートイラストコースはアートとイラストのためのコースですが、アナログでもデジタルでもオブシェでも制作できる、枠にはまらないクリエイターのコースです。そんなこんなで、版画コースに振替え授業される生徒さんもいらっしゃって、版画コースとのコラボ企画を考えているうちにひらめいた(だれでも思いつく)、レーザー加工版画を今回紹介したいと思います。版画コースのブログにつつぎ版画の話が続きますが、どうぞお付き合いください。


 レーザー加工版画を簡単に説明しますと、版画の版に当たる部分をレーザー加工機で作って、摺ってみましょうということです。こういう手法はネット検索してみるといろいろと引っかかってきます。京都精華大学の「レーザー・エングレービング版画」としての資料を見ることもできます。またデジタル版画と呼んでいることもあるようですが、まったく違う意味として使っている場合もありますので、ここではレーザー加工版画といういうふうに呼びたいと思います。

 要は、彫刻刀やポイントを使わない手抜きの版画か・・と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに手作業で版を作る醍醐味はあまりありませんが、摺るということに重きを置くと考えると、浮世絵の分業のようにとらえることができるでしょう。とはいえ下絵を描いたり最適化したレーザー加工用のデーターを作るにはそれなりに大変なことかもしれません。


 さて、今回の版画の原画ですが、言わずも知れたエドヴァルド・ムンクの「宇宙での出会い」です(図2)。ムンクはリトグラフや銅版画も数多く制作していますが、木版画もそれらとはまた違うタッチになっていて魅力的です。

 聞くところによるとこの木版画は2種類あるとのことですが、手元には第一版の図版がありそれをもとに製作しました。たぶんこの版画は木版画の一版を分割しての多色摺りと思われます。ということは板を1枚用意しそれを加工すればよいということになります。


 元の版画の写真を画像補正やトレースなどで加工し、図1や図3のように彫刻(掘る)部分と分割(カット)するパートのデータを作成しました。ムンクが実際に彫ったりカットした部分のみを再現してもいいのですが、プリントには木目がしっかり入っていますので、とりあえずカスレの木目の部分もひろってみました。

 制作する版画の大きさはオリジナルの70%くらいです。版を作るので当然左右反転します。このデータをもとにシナベニアにレーザーで加工したのが図4です。1度目はカットがずれて失敗しました。2度目が図4なのですが、これもとんでもない失敗をしています。よくみると木目が縦になっていますね(笑)


 気を取り直して摺りに入りますが、ムンクはどのように摺っているのでしょうか・・調べてないのですが、もしかしたらどの木版画も共通して油性のインクをローラーで乗せている風でもあります。がしかし、日本人としてはここは伝統的に浮世絵のように水性絵具を使って摺ってみることにしました。

 見ての通り、この版画は4つの版それぞれにに色を乗せて、組み合わせたのち一気に摺っているようです。これを水彩絵の具でやるには絵具が乾燥しないうちに手早く摺ってしまわなければなりません。


 絵の具の乾燥を遅らせるためだったり乗りをよくするために、糊を版木につけたり絵の具に混ぜたりしてみます(図5)。 素早く絵の具をつけた版木を合わせ(図6)、和紙などお好みの紙にバレンでしっかり摺ります(図7)。

 このへんの技術はもっと詳しく版画コースで学んでいただけますよ!

 


 刷り上がったのが下の図8です。絵の具が均一でなくあまり上手な摺りではありませんが、レーザーで版が作れるだろうということはわかりました。次回は絵の具を油性のものに変えてみようと思います。

 今回はムンクの作品を借りましたが、浮世絵のような多版摺りや木口木版のような精密なもの、またオリジナルの版画も制作できるでしょう。


 レーザー加工版画は今年中には版画コースとのコラボ企画として、ワークショップを考えています。レーザー加工版画に興味のある方はこんなことがしてみたいなどの要望をお聞かせください。では今回はこのへんで失礼します!

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