石膏像を購入する…「得?お得?お得な石膏像ってなんや?」

デッサン基礎科には様々な石膏像が置いてあります。

また受験科の方にもいくつか石膏像がありまして、受験科の方では他のモチーフと一緒に、組みモチーフとして配置されていることもあります。

 私も浪人生の頃は散々石膏像を描きました。石膏像を含んだ組みモチーフも散々描きました。台の上に白い布、そこにブルータス像が置いてあって、その横に透明のアクリルの筒、その筒に頭を突っ込んだ生の太刀魚っていう、わけのわからん組みモチーフが印象に残ってます。太刀魚の尻尾の方がでろーんと垂れ下がっててキラキラして綺麗なんやら生臭いやらで強烈に記憶にのこってます。入試本番の課題の一つはパジャント像に透明のビニールをかぶせてロープでぐるぐる縛ったものでした。予備校で受験対策として似たようなモチーフを描いたことはありましたが、とにかく描きにくい課題でした。

<ブルータス像>

<パジャント像>

大学には大石膏室というものがあって、予備校の時には胸像でしか見たことがなかった石膏像の全身像が並んでおり荘厳な空間でありました。

<東京藝術大学絵画棟大石膏室 コレオーニ騎馬像>

大学の助手になってからは入試の準備をする側になりました。大学の倉庫には大量の石膏像が種類ごとに棚に分けられていて、それらが倉庫の奥まで延々と並んでいる様もまた異様な空間でありました。その倉庫から石膏像を台車にのせて各入試会場に搬入していました。

美術大学の入試課題は年代によって傾向があります。うちのかみさんも私と同じ大学出身ですが、かみさんが受験した頃は石膏デッサンは入試の課題としてはあまり出題されていなかったようです。ですので石膏像を描いた経験がほとんどないようです。

そのかみさんがこのあいだ突然石膏像を描きたいと言い出しまして、ちょうど誕生日が近かったので石膏像買うたろかということになりました。特殊な買い物なのでインターネットでの受注販売ということになるんですが、さてどれを買おうかと相談になりました。石膏像の通販サイトを検索していただくとわかりますが、アートスクールにあるような比較的メジャーな石膏像から、見たこともないようなマイナーな石膏像まで実に様々な石膏像が販売されています。特に何か思い入れのある石膏像があるわけでもないのでメジャーな石膏像でええんやないかということになりました。ほんなら、そのメジャーな石膏像のラインナップの中でどれか。当然のことながら大きな像ほど高価になります。予算の都合もありますがあんまりデカすぎるのも邪魔やろうと。高ければいいっていうモノではありませんので電化製品など普通の商品を選ぶときの判断の基準が通用しません。高価で大きな石膏像を描いた方がデッサンの上達が早いというのなら話も早いのですが。一番理想的な「かみさんがどれを描きたいか」という基準で決められればいいのですが、そうなると高くてデカいものになってしまうようで。そういったことを色々と考えているうちに、どの石膏像を買うのが「お得」なのかと考え始めました。

今までの人生において、石膏像とは描く対象物でありましたが、買う対象になった時に初めて「得」という視点が芽生えました。得?お得?お得な石膏像ってなんや?色々と考えた末、「いろんな角度で絵になる石膏像の方が得」という結論に至りました。

石膏像に限りませんが、絵画のモチーフになるものにはよい角度というものがあります。よい角度から描くことで描きやすくなったり、いい絵になったりします。石膏像の描き方の本などに掲載されている参考作品もそれぞれの石膏像が美しく見える、定番の角度から描いていることが多いようです。胸像などは背中側が空洞になっているものもありますのでそうなると正面からの、ある程度限定された角度に限られてきます。大きかろうと小さかろうと、高かろうと安かろうと、石膏像の周りをぐるりと回って見て、あるいは上から見て、下から見上げて、美しく見える角度が何箇所もある石膏像の方が一体の石膏像で数通りのデッサンができて得であると、このように考えたわけです。

以上のことを考えて、選んだのは「メディチ」です。手頃な大きさですし、角度によってかなり形状の印象が違う。頭髪部の複雑な形状の描きこみも楽しめるし、何より男前です。

受注生産ということですので出来たての石膏像が届きました。やはり新品は美しいですね。

かみさんは黒い布で周りを囲って光の方向を一定にした環境を作って描いてます。像の下に回転台を置いて簡単に回せるようにしてますね。

今回、石膏像を購入するということを通して色々考えたり感じたり思い出したりすることがありました。皆さんも一家に一体というぐあいにオススメはしませんけれども、もし石膏像を購入される場合はどういう基準で、何が理由で、その石膏像を選ばれたのか是非ともお聞かせください。

アートスクールでは、在校生の方を対象(申し込みコースや受講形式によっては非該当な場合もあります)に、山本尚子先生(他、デッサン基礎科・美術科講師陣)が担当する「石膏デッサンセミナー」を行なっております。概要を掲載しておきますので、ぜひご検討の上ご参加ください。

 

 

 

松田 一聡

松田 一聡
Profile
‘01 東京藝術大学大学院油画技法材料研究室修了
‘12 「重力」展(Gallery Suchi)
‘13 アートフェア東京 2013(Gallery Suchi ブース)
‘14 「重力」展(Gallery Suchi)
‘15 「重力」展(Gallery Suchi)
   「写実って何だろう?」(ホキ美術館)
Message
絵画を学ぶにあたって、1つのことに集中することも大切ですが、
いろいろな表現に挑戦することで得られるものもあると思います。
ArtWorks
講師インタビュー

 

 

 

 

 

 

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