美術科 松田一聡講師 インタビュー

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松田一聡講師特集インタビュー

美術科・松田一聡講師。写実画を中心に意欲的に作家活動をされています。制作のこと、東京藝術大学で学ばれたこと、白亜地下地セミナーのこと。気になることをお聞きしました。

今回松田講師にインタビューするのは、事務員Aでございます。松田先生、よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。

では、まずは、最も気になるところをお聞きしていきましょう。プロフィール写真の、「着物と刀」は一体どういう経緯で撮られたのでしょうか……!?

今年の春、結婚写真を撮った時のものです。
結婚して10年になりますが、結婚当時は茨城県に住んでおりまして、敷地が400坪くらいの一軒家をアトリエ兼住居としておりました。長男が生まれ、中学校の美術教師としての仕事も決まり、作品を取り扱ってくれる画廊も決まって「俺ってすごいなあ。順風満帆やないか。」と思ってました。
費用を貯めて結婚式を挙げようという計画もしておりましたが、3.11の東北の大震災で茨城の家に住めなくなり、奈良のかみさんの実家に逃げてきて、子育てやのなんやかんやと結婚式どころではなくなったまま何年も経ってしまいました。
昨年あたりから、ここらで写真くらいは撮っておこうかということになりまして、桜が満開のいい時期にスタジオに行って撮ってもらいました。
洋装和装どっちも撮ってもらって、「御新郎様」お一人の写真も撮りましょうということであの写真ができました。スタッフのお姉さんが次々と、こうしましょう、ああしましょう、刀持ちましょう、刀抜きましょうとぐいぐい来た結果あのようになりました。
今、冷静にあの写真を見たら結婚も何も関係あらへんやないかと気付きました。
ちょうど近い時期にアートスクールの講師紹介の写真を更新するということでしたので、最新の写真としてこれを選んだんですが、完全に浮いてますな。

そんな経緯が…逆に覚えてもらいやすくて良いのではと思います(笑)
さて、普段はどんな風に過ごされていますか?

一週間のほとんど、アートスクールや美術大学、画材メーカーで行っているワークショップなどで指導してます。制作は大学の夏休みと春休みにやっています。

おお、絵の世界にどっぷりですね。
なぜ絵画に興味を持たれたのですか?絵を描き始めたきっかけなどはありますか?

私たちの世代はマンガ、アニメ、ゲームなどの影響が大きいですから子供の頃はそちらの方にも親しんでいました。
小学校の休み時間には自由帳にドラえもんやガンダムを描いていました。授業の中でも図工が一番好きな科目でしたし、成績も良かったと記憶しています。
そのうちにいつの間にか「松田は絵が上手い」という評価がクラスや学年の中で定着しはじめて、他人から見た「自分」の形と、自分の中でも「自分」を形作っているものの大きな領域を「絵」が占めているという事を自覚し始めました。高校で美術部に入り、進路も当たり前のように美術大学に進学する事を選びました。劇的に何か大きなきっかけがあったわけではなく、自然な流れでした。

それで、美術大学への進学を決められたのですね。
実際に入学してみて、どんな大学生活でしたか?大学ではどんな制作をされていましたか?

東京の大学でしたので親元をはなれて一人暮らしをしてました。とにかく浮かれてました。調子に乗ってました。何をやっていたんでしょうかね。反省ばかりが残ってますね。それでも卒業して、修士も修了しましたからゆるい学校ですね。現在、勤務している大学でたまに学生を注意することもあるんですが、注意してる一方で、俺ごときがなにをえらそうに言うとんねんと。学校来て授業出てるだけ俺よりましやないかと。心の底から思います。
大学時代は大手運送業者の美術梱包部でアルバイトしていました。
作品集荷~会場に搬入~展示作業~会期終了後に搬出~作品返却という展覧会の一連の流れを実際に経験できて本当に勉強になりました。作品の展示の仕方、梱包の仕方などはそこで覚えました。毎年のアートグランプリや講師展の搬入搬出にもこの時の経験が役に立っています。
アートスクールの生徒さんも出品されている公募展の作品の送り先がそこの元バイト先であるということがあって、住所を見て懐かしく思うことがあります。そこに一旦作品を集めてから各展示会場に搬入するんでしょうね。

松田先生はアートグランプリや講師展の搬入搬出をよく主導されていますが、こういった経験があったからこそなのですね。
さて、写実画を描こうと思ったきっかけなどはありますか?

めんどうくさいおっさんのような事を言いまして申し訳ないんですが、実は写実画を書こうと思った事は一度もありません。おそらく他の、いわゆる写実の画家と言われている方々もそうだと思うんですが、写実っていうのは手段であって目的ではないんだと思います。何か表現したいものがあって、それを形にする手段として写実的な表現をとるという事なんでしょうね。

なるほど、そのあたりも本当はもっと詳しく聞いてみたいですが……今回はあいにく割愛いたします。
では、その普段描かれている絵で、リアルなモチーフながらも、背景が白いのはなぜですか?

十数年前、新潟の豪雪地帯の雪山で、一人で冬ごもりをしていました。なぜそんなところでそんなことをしていたのかは本題から離れそうなのでここでは割愛しますが、そういった環境の中で、雪の積もった山の斜面に生えていた木を描きました。
冬ごもりをしていた施設のトイレの窓の正面にその木が見えます。日中ははっきりと木の形に見えますが夜になると形が曖昧になって、雪原の上を腰の曲がったお婆さんが杖をついて歩いているような形に見えるのです。
最初にそう見えた時は一瞬ギョッとしてめちゃくちゃ怖かったんですが、よく見ると「ああ‥木か‥」と気づくわけです。
で、数日経つとそのことをすっかり忘れていて、用をたしている時にまた、うわっ!となって「ああ‥木か‥」と。吹雪の夜は一層迫力がありましたからね。
そんな具合で3、4回驚かされたあたりで、ちょっと婆さんに一回会いに行ったろかと思いまして天気のいい日に長靴を履いて雪の斜面をザクザク登って会いに行きました。実際に間近で会ってみると、いい絵になりそうなお婆さんでしたのでモデルになっていただこうと思い、写真を撮ったりスケッチを描いたりしました。
雪山の斜面に生えている木を斜面の下の方から見ていますから、その木の背景は雪の白になります。背景を白くした作品を描いたのはそれが最初です。

基本的に私はわがままな性格なので、描きたいものしか描きたくないということがあります。取材に行って、良いモチーフに出会えれば当然それだけを描きたいので、そのほかの余計な背景などは描きたくありません。中途半端に背景をぼやかすとかそんなことをするよりもいっそのこと無くしてしまえと。白でええやないかと。そう思ったわけです。

背景を白くする構想が出てきたのは、それを数年遡った20代後半から30代前半の4年間、東京藝術大学の油画科で助手を務めていたときの経験からです。
現在の藝大のカリキュラムがどうなっているのか存じませんが、当時の藝大の油画科では学部1年時の下地実習の授業が必修科目になっていました。この下地実習の授業は助手が主体となって行うのが通例となっていて、私もその実習を担当していました。実習の内容は字のとおり下地の実習です。パネルや木枠に麻布を貼り、膠と顔料で作った塗料を塗布して白亜地という油画の下地を作ります。
学生たちが下地実習で作った下地はその後、別の授業で作品を描くことになるのですが、毎年何人かの学生が必ず、使うのがもったいないと言います。下地が完成するまでは何日かかかるので、時間をかけて苦労して作った下地を使いたくないという事もあるのでしょうがそれ以上に、下地の白さを塗りつぶしてしまうことがもったいないというのです。
白亜地の白さは絵の具の白を塗った白さとは違う美しさがあります。もったいないと言う学生の気持ちはよくわかります。
助手の任期中、毎年こういった学生の声を聞いているうち、この下地の白さを生かした作品を描けないかと思いたったわけです。

そもそも日本の伝統的な絵画作品においては、地を残すという手法は珍しいものではありませんので、そんなに突拍子もないことをやっているという感覚はありません。実際に下地の状態をそのまま残しているかというと残念ながらそうではなくて、膠の性質上、温度や湿度の影響を受けやすいので、背景の白い部分にも油絵の具に使う溶き油を塗布し、保護しています。背景を白くすることでより構図やモチーフの形態や作品の狙いが明確になったりと、いろいろな要素がありますが、そういったことは実際に描いてみて初めて感じたことです。
アートスクールで行なっている白亜地セミナーはこの藝大の下地実習と同じような内容でやっています。白亜地というものはあくまでも下地の選択肢の一つですので、それを使ったからといっていい絵が描けるというものではありませんが、合う人には合う下地ですね。私も自分の油彩作品は全て白亜地に描いています。

あの白の着想の元は雪だったのですね……! また、普段指導されている白亜地と、ご自身の作品はつながっている部分が大きいのですね。

松田先生、ありがとうございました。

 

 

 

松田 一聡

松田 一聡
Profile
‘01 東京藝術大学大学院油画技法材料研究室修了
‘12 「重力」展(Gallery Suchi)
‘13 アートフェア東京 2013(Gallery Suchi ブース)
‘14 「重力」展(Gallery Suchi)
‘15 「重力」展(Gallery Suchi)
   「写実って何だろう?」(ホキ美術館)
Message
絵画を学ぶにあたって、1つのことに集中することも大切ですが、
いろいろな表現に挑戦することで得られるものもあると思います。
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