版画工房での銅版画展

春の展覧会シーズン真っ盛りで、大小様々な展覧会が模様されています。皆様も足繁く展覧会に出かけられていることと思います。私も可能な限り出かけては様々なアーティストや懐かしい人にお会いして、勉強させて頂いたりしています。
 最近はミュージアムマニアという人たちがいて、初心者やベテランと呼ばれるらしいです。鑑賞するのに初心者もベテランもないと思うのですが?
何はともあれ、我々をワクワクさせてくれるシーズンです。
 そこで今回は、あまり見ることのない、知人の銅版画工房で開催された、短期間の個人的な展覧会を紹介したいと思います。
 展示作品は工房主が講師を勤めるカルチャーセンターで制作されている初老の生徒さんの作品です。朝ドラでも注目されている植物学。植物を育てながら植物を描き、自分なりの植物図鑑を作りたいと制作されているそうです。ラインエッチングを主とした簡素な作品ですが、銅版画ならではの味わいがありました。 

普段は客間というかラウンジというか、多目的に利用されている部屋を展示スペースとして、銅版画が展示されています。



同時に、ここの工房も紹介しておきます。 
こちらの作品は原画で、工房の作業台や部屋の一角に展示されています。



原画とウォーマー。

銅版画用プレス機です。

腐食、水洗用バット。


これはオフセット印刷の製版に使用されていた製版機のライトを利用して、銅版の写真製版に使われています。


このアクアチントボックスは彼の手作りです。アクアチントは松脂を粉にして銅版上に散布するのですが、このアクアチントボックスでは大きなファンで松脂の粉末を攪拌して散布します。銅版画家や美術学校などで使われている物もそれぞれ使い勝手の良いように工夫され、微妙に違うようです。

ちなみに、家具、調度品の殆どは彼自身が作ってしまいます。


これほど掃除の行き届いた版画工房はあまり見かけません。私の工房以外の版画工房では、私の知る限り、殆どが綺麗で清潔です。特にこの工房は掃除や整理整頓が行き届いています。綺麗に整頓されているだけではなく、非常に使い易く、機能的になっています。これは版画に限ったことではなく、制作現場という所は機能的になっています。その人の性格の問題だけでなく、道具や技術(技法)、延いては作品に対する愛情やこだわりの強さや深さに依るものだと感じます。「作品を見ればアトリエが分かる」とよく言われます。絵の具にまみれて制作するという旧いイメージを捨てることが、新しい作品を生み出す要素のひとつかも知れません?



谷山 文衛

谷山 文衛
Profile
‘10 佐伯俊男展に参加(DA-END/PARIS)
‘11 「日本のイメージの多様性」展(USA)
‘12 V Biennale Internazionale Mail Art2012(ITALIA)
‘13 International Mail Art Exhibition at the Akademie der Kunst.Berlin(GERMANY)
‘13 第4回 NBCシルクスクリーン国際版画ビエンナーレ展(美術家連盟画廊/東京他)
‘15 日米美術交流展(金沢湯涌創造の森/石川)
美学出版刊行『戦後関西版画史』の「関西の版画工房」を執筆
大阪芸術大学、京都造形芸術大学元非常勤講師
宝塚造形芸術大学元特別講師
刷り師として国内外有名作家の版画制作に携わる。
Message
ストレスの溜まる現代社会で、
ひとときの精神の解放を共有したいと思っています。
ArtWorks

 

 

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