画材 いろいろ 2

膠について

日本画の画材についてご質問いただくことがあります。
絵の具は、顔料または染料(色の粉)と展色材(色の粉を定着させる糊の役割)、保存料などでできていますが
日本画の場合、材料はシンプルで、”岩絵の具”と”膠”のみです。
”岩絵の具”については、最近は、美術の教科書などにも載っています。



でも、膠って何??
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、膠とは、「牛や鹿など動物の骨や皮や腸や腱、または魚の骨や皮や鱗や浮き袋などを煮出して抽出した動物性タンパク質を乾燥させ固めたもの」です。
強い接着力があり、水との親和性も高く、古くから、楽器の製作などにも使用されています。



膠は、使用する前日に水につけてふやかし、使用する際は熱にかけて溶かします。
夏場は腐りやすく、冬は寒い部屋で描いているとすぐに固まってしまいます。
チューブに入った接着剤と違い、その場でパッと使用することは難しいのですが
膠が溶けるのを待ったり、じっくり乾くのを待ったりするのは、それも含めて日本画の制作において豊かな時間になっています。
天然の材料で描画できる喜びには変えられないものがあります。



どんな画材を使用するかで、表現技法が変わるのはもちろん、絵の具や材料の特性は無意識に作品を制作する私たちの感覚や時間の捉え方にも影響するのではないかと思います。
今、使用している画材を見つめ直すことは、制作に新しい発見をもたらしてくれるかもしれません。



福井 悠

福井悠
Profile
京都市立芸術大学 美術学部 日本画学科卒業

Message
絵を描いたり、ものをつくったりすることは今まで考えもしなかったような物事の奥行きや豊さをじっくりと感知し、自分の中で耕すことのできる幸せな分野だと思います。
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