アートセラピー(芸術療法)で描く空と自己表現〜臨床美術講座の効果

現代の人間の心は何かと疲れがちです。
アートセラピーは、子どもの時から一生を、表現活動を通しての自己実現・成長と、楽しく制作することによって健康を維持するという効果のあるもので、自己カウンセリングや予防のための右脳トレーニングとして期待されているアートの分野です。
誰もが、才能・能力とは関係なく、画家・作家(アーティスト)になれるという体験を持つことで、自分で自分を認め、愛し、もっと好きになれる方法です。

 

 

⒈アートセラピー(芸術療法)とは

アートセラピーは海外では広く実践されている分野で、ワークショップなども多く開催されていますが、日本では一般的な心理療法と比較すると認知度はまだ高くありません。
ですが昨今の世情や人々が感じる心理的ストレス緩和などからも徐々に高まりつつあり、特に心理的なストレスやメンタルヘルスの問題に対処する手段として注目されている分野です。
アメリカでは大学や専門学校でアートセラピーの教育プログラムが提供され、認定アートセラピスト養成プログラムがあります。
アメリカ芸術セラピーアソシエーション(American Art Therapy Association)などのプロフェッショナル団体が研究活動しており、アートセラピーが心理療法や治療・リハビリテーションに必要な一部として位置づけられています。

 

2 .アートセラピー(芸術療法)の効果

アートセラピーは、ストレス症状の軽減・トラウマ処理・自己受容・コミュニケーションスキルの向上など、さまざまな健康上の課題に対処し支援するのに効果的です。また、アートを通じて感情や内面のプロセスを探求し、心理的な健康に影響し精神的な福祉を促進するアプローチがスムーズです。
アートを通じた自己表現は、言葉だけでは表現しづらい感情や思考を具体的に可視化でき、絵や色を通じて自己との対話や探求のアプローチとしてとても有効です。

 

3 .アートセラピー_臨床美術講座で描いた「思い出の空」

アートセラピー・臨床美術のコースで「思い出の空」を私もお描きし、生徒様にも描いていただきました。
画像は在田の作品です。

 

 

中学生の時に、兄とカメラを持って外に出て、ぐうぜん空を見ていました。
夕焼け空に月が浮かんで、雲が流れ、童話の物語の一場面ような幻想的な輝く金色と紫色のグラデー
ションカラーの空でした。
38歳になった私は、20年以上も昔のその空を思い出し、水彩絵の具でお描きしました。
あの空が再び想起され、描き出され、「私の中に、こんなにカラフルな思い出があったのだ」と、感慨深いものがありました

 

・混色実験

まず、16切の画用紙に、ハケで水を引き、赤、青、黄の3原色の絵の具を紙の上に少しずつ出します。
10号水彩筆で、絵の具を広げてゆき、色と色の境目を混色します。赤と青を混ぜると紫になるとか、青と黄を混ぜると緑になるとか、赤と黄を混ぜるとオレンジ色になることを、皆さんなんとくご存知と思います。
実際に絵の具を混色して観察してみて、その微妙な色合いを感じます。
色料の3原色の混色は、加法混色なので、色を混ぜると黒色に近づきます。
黒色や茶色に対して汚れているという印象を持たれる方もいることから考えられますが、混色して、濁った色になっても、汚い色というのはありません。自分の感性で、自然とできた色には、こんなに素敵な色ができたよ、と言えますから。
木陰の微妙な色合い、樹間の囁き、雲間の美しい重なり、山の連なり、制作の中では、自分が感じたことのある、自然の中の色彩を感じてください。
アートセラピーでは色はとても重要な役割を果たします

・講師作品

明るい空の風景が描かれました。柔らかな白い雲は、水彩絵の具の空を描いた上に、白い水彩絵の具を載せて、乾いた筆で表現しました。
描いているうちに、画面下の方に森が現れました。
空と空を飛んでいる鳥が休む場所が自然と描かれたような感じがします。
人間も生き物なので、思い切り飛び回る鳥のように私も生きていることを感じて毎日を過ごしたいです。

・生徒作品

柔らかな色彩、ペールカラーのグラデーションの朝の空が描かれました。爽やかな、なんとも言えない
気持ちを現されました。朝焼けの空の下を散歩した思い出を描いて、嬉しそうになさっていました。

 

4.まとめ

生徒さんの作品はみんな嬉しい気持ちや感動した日の思い出を、のびのびと表現されています。今
回は水彩絵具で描きましたが、オイルパステルや色えんぴつなど、好きな道具を選択して描くことができます。
表現方法の研究、新しい自分の好きなところの発見、毎日の楽しみ。生徒様の目的は様々です。
みなさん、自分自身の思いを写した作品を飾ってくださいね。