何が残る?ハンドワーク作業

先日、水彩画をYouTubeで教えるおじいさんの登録チャンネルが100万人を超えた、というニュースをチラ見しました。
私も30年前は水彩画をよく描いていましたが、絵具をわざわざ買う、筆を洗う、いちいち乾かす、といった作業時間がこれまた面倒で、
描いている楽しさが3、準備などの作業7と負担が多いながらも、3ある楽しさのために何とか描き続けていたように記憶しています。
満足度は100%では無いにしろ、今はiPadで「水彩画もどき」が描ける時代。
あの煩わしさを知っている世代からすると、こんなに手軽に、速く、しかも即効ファイル変換が出来てすぐに公開まで辿り着けるなんて夢のようだ!
と思っていたのですが、子供世代ではアナログ作業をむしろ楽しみたいという欲求が生まれるんですね。
写真の現像時、暗室で感熱紙に光が入らないよう昔は苦労した、なんて話をすると、まるで歴史の教科書に載っているワンフレーズかの如く、
子供世代が感嘆驚愕する様を見ると複雑な気持ちです(笑)。

いろんな人と話をしていると、制作工程の中に点在するアナログと言われる作業の種類によって、人それぞれ興味の対象が全く違うことにも気付きました。
単純に水彩画を描き、SNS等に公開、視聴者の反応をチェック、という流れだけを見ても、
・水彩画の画材を揃えたくなった人
・描いている途中をひたすら観ていたい人
・添削内容を知りたい人
・動画を観て一から描き方を真似していく人
・動画の作り方を参考にする人
・登録者数の多さで判断する人・・・

と「水彩画の動画」というだけで、こんなに多種多様な可能性が広がるんですよね。
おそらく”水彩画を上手に描きたい”目的はほぼ同じで、そこからの検索で絞られてきているのでしょうけど、
その先にある目的とアプローチ方法が人それぞれ。
中でもとりわけ、いわゆるアナログ=手作業(ハンドワークと呼んでおきます)部分への比重が多いのだと思います。
「絵具の量と混色方法」「修復技術」「講師が加筆した絵のビフォーアフター」など、
講師、特にオンラインで指導する側は、その辺りのニーズをしっかり踏まえて動画等作成していかないといけない、と
改めて肝に銘じました。

いろんな目的でアクセスくださった人に対し、どこまでご要望にお応え出来るのか試行錯誤です。
またお問い合わせくださった方から、違う目線での感じ方、新たな情報、ご要望を拝受することも自分のアップデートに繋がります。
VRで上手な絵を描いているような気になれる技術、デジタル加工すれば綺麗な作品を作り上げた気になれるツール、
そしてそれが直ぐに評価されるシチュエーション。
完璧とまで言える環境の中、それでも今後残っていくであろうハンドワーク技術って一体何だろう。
身体に染みついた長年のハンドワーク技術のクオリティをどうやって維持していけば良いのだろう。
常に新しいものに興味と好奇心を持ち、いろんな人と交流する性格を維持するにはどうしたら良いのだろう・・・

100万人登録者越え水彩画おじいさんの「性格」と「健康維持方法」は如何なるものか。
むしろ私はそちらの方に興味を持ったニュースでもありました。
おじいさんの益々のご活躍を期待し、応援して参りたいと思います。

 

しらさわ麻代

Profile
京都市立芸術大学 美術学部 構想設計卒業後、
大手通信販売会社にて商品企画担当。
退社後フリーで商品のイラスト・デザイン等に
関わりながら、外資系医療資材関連の会社で
カタログ、販促物、web などの制作担当として勤務中。

Message
新しい物を企画すること、作ること、
そして売り出すためのプロモーションをすること。
材料からかき集め、商品として形にするまでの
一連の流れが面白いです。
色んな物を生み出す源は、
たった1本の鉛筆で絵を描くことから始まりました。
手が動く限り、ずっと絵を描き続け生きていたいです。
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