STUDENT INTERVIEW

【絵本コース】にしざわ ゆかり さんインタビュー

クラウドファンディングにてタオルメーカーとコラボ絵本が完成

以前に、HPの活動情報 に掲載した「にしざわ ゆかり」さんの絵本が完成しました!
きっかけは、「おぼろタオル株式會社」さんに送った1通のファンレター。
その縁はつながり、クラウドファンディングを利用し、にしざわさんの初めての絵本は完成しました。
そこで、初めてづくしの「にしざわ ゆかり」さんにお話をうかがいました。

 

絵本を出版をして

ーまずは、出版おめでとうございます!
当初から仕事としての絵本の作成を目指し、教室では何冊か絵本をつくりコンペに応募したり活動をされていましたが仕事としての絵本、初めての一冊が完成しましたが感想はいかがですか?

初めは実感が湧かないまま無我夢中でした。
原画の作業が終わってしばらくしてから少しずつ実感が湧き、いかにありがたいことかともう一度驚きました。
本当に感謝しなければと思っています。

初めての絵本、そしてクラウドファンティング

ー感謝することばかりですね。
でも最初の一歩は素直な気持ちでのファンレターがあったからこそです。

それが、クラウドファンティングという形式で出版につながり、アマゾンでの販売以外にも「おぼろタオル株式會社」の地元の幼稚園や小学校、児童施設等に寄贈まで予定されているとの事。
まるで「わらしべ長者」のような、この一連の流れ自体が、絵本のような素適な出来事(物語)ですね。
起承転結の起は、にしざわさんが送った1通のファンレター。
この物語の主人公として、作家として、この結末はどのように感じていますか?

ファンレターを誰かに送るのは生まれて初めてだったので、それがこんな展開になって驚きました。
お気づきの点があればお送り下さいと書いてあるメールアドレスに「良さに気づいた」という趣旨のメールをしたのですが、返事が来てびっくり。
会社の窓口の奥には血の通った人間がいるし、どんな工業製品も血の通った人間の手によって作られているし、絵本を作るにしても、沢山の人間の時間と努力によって作られているのだなという気づきがありました。

サービスを受ける側の消費者としては日本は住みやすい国と言われています。
今回助けていただいたタオル会社の方と接して、こういう人たちの日々の地道な努力によって社会は回っているのだと感じました。
絵本作りの作業にしても、アイデアを思いつくだけじゃなく形にするなら地道な作業がいっぱいです。
地道の大事さを認識するようになりました。

また、たくさんの人に応援してもらって絵本が作れて、一人ではできなかった事なので、本当に助けてもらえてありがたいなと思いました。
欲を言えば自分も誰かを応援できるようになれたらいいのになと思います。
一方的に応援してもらうだけではなんとなく恥ずかしい気がします。

 

ーそうですね、たくさんの気づきによって、今が結末ではなく新しく物語を続けてくれそうですね。
また、今回の絵本は「おぼろタオル株式會社」という企業とのコラボなので、クライアント、編集者、装丁家そしてクラウドファンティングという形態なので、コメントまで書いてくださっている応援の方々と一般の絵本づくりよりも多様な人々と関わり、絵本が完成しました。
いままでは、自分の作品として描かれていたと思いますが、今回はたくさんの人との共同作業で、いつもとは違う状況だと思いますが、制作においての違いはありましたか?

津市の子どもさん達がたくさん読んで下さる計画だったので、具体的に誰が読んでくれると想定できると、観念的な、抽象的な部分が薄れていって、お説教くささが無くなっていって、楽しんでもらいたいためのアイデアを出すとっかかりができました。
今までストーリーが観念的になりすぎて楽しいストーリーが作りづらかった。
そこを津市の子どもさんの存在が力を貸してくれました。

私が「こんなアイデアを出しました」とメールで送ると、おぼろタオルの方と、編集さんと、装丁家の方が
「ここはこういう意味で良くないかも」とアドバイスして下さるので、「じゃあこう改善した案はどうですか」と送る。
基本的にはそれを繰り返す内に良くなっていって、それが実践的な、具体的なアドバイスで非常に助かるんです。

今まで誰に届けたいかとか、そういう部分が曖昧だったかもしれないです。
そうすると私の場合は、個人的な観念になりすぎるのかもしれません。

 

今後の目標

ーなるほど、具体的な想定が作品を変えてくれましたか、これは実際に経験しないと考えるだけでは変われないことかもしれませんね。
作家としての立ち位置の確認、物づくりをする人全てが抱えるのテーマですね。

そして今までは、絵本を作ることが目標だっと思いますが、これからは、仕事として描き続けることが目標になった事と思います。
そこで今後についてですが、今までと何か考え方が変わったりしましたか?

今までは父親から「10年間、時間をあげよう。20代の10年間でデビューできなかったら、才能が無いから諦めろ」と言われてきたので、とりあえずは「認める」と言ってもらえました。
でも、年齢的に、もしも結婚するなら、家事育児が忙しくなるだろうし、絵本に専念できなくなるなとか、絵本作家になると決心した20歳当時には想定できていなかった迷いが最近はあります。

臨機応変に、一番その時その時でマシな方の選択肢を選ぶしかないし、 最善は尽くすけど、それ以上は自分にはコントロールできないから、 ある程度は流れに身を任せられるようになりたいです。
何もかも自分の努力でコントロールできるんだったら、 誰でも世界征服できることになるし、 人間にコントロールできるのは最善を尽くすことだけだと自分に言い聞かせています。

計画を立てないとかじゃなくて、 計画は立てて努力するけど、 何もかもコントロールできるのが当たり前みたいなのは気持ちが疲れます。
だから計画は前提条件が変わるたびにコロコロ変更されると思う。
でも絵本はもちろん描き続けたいです!

 

アートスクール大阪について

ーこの絵本を見た人が、次の作品が仕事をつなげてくれるような幸せな循環があるとよいですね。
こういう仕事をしようとすると、やはり描き始めてからの10年というのは大きな変化の時期でもあります。
質も大事ですが、量も描かないと伝わらない部分がありますから、それぞれの環境のなかで、できることを頑張るしかないですからね。
イラストの専門学校卒業後に、アートスクール大阪に入校されましたが、そのきっかけや選択の理由はありましたか?

中学高校時代は油絵で風景画や室内画や静物画を描いていたので、人体をもっと練習した方がいいと専門学校の卒業制作でアドバイスされて、それを訓練できるところはないかなと思いました。
形をなんとか取れたところで魅力を出すまでいかなくて……。

アートスクール大阪はモデルを見て描けるセミナーがあるし、デッサン、絵本、イラストとそれぞれその道のプロが指導して下さいます。
本格的な教室は関西にいくつかあるようでしたが、アートスクールは充実しているのに安い値段で学べるのも良かったです。

また、油絵や日本画はモデルとなる人間や物や風景を見て描くからリアルになっていく。
イラストは広告や本として売上を上げれるかとか、早いかとかが評価基準なので、写真を見て描くような、日本画だとダメな事もOKです。

絵本は実在しない場所のストーリーも描ける事が基本なので、写真を見て描くようなイラストの手法は応用しづらい。
絵画ともイラストとも違う、実在しない背景や人物を描けるというのが必要です。
だから専門学校の卒業制作では、実在する場所をモデルに描きました。
絵画やイラストとは別の技術を習得せねばと思いました。
そこももう少し訓練したかったんです。

アートスクールで仕上げた2冊の絵本。
それ以前にも、2冊の自主作成を経て、今回の絵本「はたらくタオル」ができました。


ーいつも授業中にお話を聞いていますが、本当に勉強が好きなんですね。
ひとつひとつ積み上げることが自信になっていると思います。また、入校時はデッサン基礎科に通い、第198回イラストレーション誌ザ・チョイス入選され、その後、絵本に転科され現在の結果につながったようですが、何か決めていたことやプランがありましたか?

まず人物画を、ただ形を取れるというより魅力が出せるように訓練したいというのが決めていた事です。
デッサン基礎科の先生からは、いかにもアカデミックなデッサン的な絵に変えない方があなたの絵の魅力が残せると言われ、
ガチガチなデッサンじゃない描き方を指導した方があなたの場合はいいでしょうと、そういう指導を最初2年ほど受けました。

その後は、作品を作る事を通じて学んだ方が良いと言われて。
デッサン基礎科の先生が「デッサンを教えすぎたくない、君の良さは下手ゆえの魅力だから、上手くなりすぎちゃダメなんだ」と言ってくださって。
それで絵本コースに転科して、絵本制作をきちんと見てもらいました。
最初は禅問答のようだったデッサン基礎科の先生の教えも、今は段々と理解できる部分が増えていってます。

美術大学のデザイン学部イラストレーション学科絵本コースを専攻した場合にどんな専門科目の理論科目を学ぶのか調べて教科書を取り寄せて読んでみたのですが、デッサン基礎科の先生も絵本コースの先生も、理解が深まる解説をたくさん下さって、プランには無い楽しい出来事でした!
おすすめの本を紹介して頂いたり、面白かったです。

絵本コースに来てモデルのない場所の背景を描くのにも慣れました。
ストーリー力もアップしました。
先生方からのフィードバックを受けて、当初のプランよりもより良いプランになったなと思います。
独学よりもフィードバックがたくさん受けれて勉強になりました。

ーおもしろいですね、頑張った事には頑張っただけ結果がでます。
これはもう自然の法則ですが、頑張れない人が多いのも事実ですし、素直に受け入れることも能力です。
今回はお忙しいところ、いろいろとお答えいただき、ありがとうございました。
では、今後の作品にも期待しています。

インタビュアー : 絵本コース講師/中田弘司

にしざわゆかりHP

絵本「はたらくタオル」
さく・にしざわ ゆかり
出版社/主婦の友社 1,100円

 

 

 

中田 弘司

中田 弘司
Profile
制作事務所勤務デザイナーを経て、1989年よりフリーランス。
今までに幼児向け雑誌絵本等にて100話以上のお話の挿絵制作。
絵本をはじめ、「ビッグコミックオリジナル・増刊号」(小学館)表紙イラストや、
月刊誌「大阪人」にて歳時記や町歩きの画文の連載等、
壁画からキャラクターまで多様な作品を制作。
東京・大阪・神戸にて個展多数。主な絵本に「ぷぅ」( 作:舟崎克彦/ポプラ社 )がある。
Message
目には快感、心が楽しみ、気持ちを遠くに運ぶ
絵本やイラストを目指しています。
仕事での経験を生かし、一緒に考えながら、アドバイスをします。
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