色について 【 色相・彩度・明度編 】

絵本コースでは、各画材研究の最後に
その画材で描写可能な絵本作家さんの作品模写を行なっています。

これは構図や色使いなど、作家さんがどんな考えで描いているのかを探り
自分にないものを取り入れるためにも、とても重要な行程です。

 

その際、生徒さんによく「同じ色が出せない。」
「どう色を作ればいいかわからない」と相談を受けます。
普段から絵具に触れる機会がないと、
いざお手本と同じ色を作ろうと思っても
どうやって混ぜればその色になるのか、わからないですよね。

でも、色の原理さえわかってしまえば
マゼンタ、ブルー、イエローの三色で
ほとんどの色が作れるようになります。
今回はそんな色についてのお話をしていこうと思います。

 

色には、簡単に分けて3つの要素があります。
【色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)】
この3つを把握しているだけで色の作りやすさは、
格段にアップします。

 

では、色相、彩度、明度とは何なのか。

一般の方だと聞いたことないか、
「名称だけ知っているけど、どう違うのかわからない。」
っていう人も多いでしょう。

 

まず「色相」からお話しします。
みなさんが「色」と聞いて初めに思いつくものは、
上記の色味は色相といい、
どんな色合いの絵にするかを決める重大な要素です。
ですが、単に黄色と言っても様々な黄色があります。
純粋な黄色、オレンジがかった黄色、黄緑のような黄色。
同じような黄色に見えても色相の度合いによって
絵の印象は大きく変わります。

 

色相環

これは、色相をサークル状にしたものです。
同系色、補色を一目で確認できます。
上の図の隣り合わせの色が同系色、
対面し合っている色が補色です。

■同系色
同系色を混ぜることで、
純粋な黄色からオレンジ色の黄色、黄緑よりの黄色へと調節ができます。
同系色同士だと綺麗な色を保ちつつ混色することができます。

■補色
補色同士の色は混ぜ合わせると黒になります。
絵を描く時、無自覚に色がくすんでしまったって経験ありませんか?
実は、それは補色が筆に付いたり残っていたり、
補色乾いていない状態でパレットや画面で
混ぜ合わせている場合が殆どです。
補色で綺麗にグラデーションしたい場合は
各色の同系色で中間を混色してあげると
綺麗に混ざるでしょう。
補色はお互いに与える効果が強いため
濁らせたくない場合は気をつけて使用しましょう。

 

つぎに「彩度」
色の鮮やかさを決める部分です。
鮮やかな黄色にするか、
くすんだ黄色にするかはここで決めます。
彩度の高い色ばかり使うと、鮮やかで元気な印象の絵になり、彩度の低い色ばかり使うと、渋く落ち着いたシックな印象の絵になります。新しく絵を描き始めたばかりの人で、「鮮やかな色ばかりを使ってしまう。」っていう人は多いのではないでしょうか?彩度の高い鮮やかな色は綺麗で使いやすいですが、乱用することで何が主役なのかが、ぼやけてしまったり、目に痛い画面になったりと、デメリットもあります。
そんな時、活躍するのが彩度の低い色です。
目立たなくていいところの彩度を下げて描いてあげると、
目立ってほしい彩度の高い部分がより浮き上がってくれます。
そんな名脇役を生み出すことができるのもこの「彩度」です。

 

補色表

 

こちらは黄色と青の補色表です。
一番上横一列の黄色と、一番左縦一列の青は、
補色が混ざっていないため綺麗な純粋な色です。
ですが、だんだん黄色は下に行くにつれ、
青は右に行くにつれ鮮やかさが低くっています。
そして、丁度、真ん中の同比率黄色と青を混ぜ合わせた部分は
ほぼ色がなくなります。
(IllustratorでのCMY彩色のため画像では若干色がついております。)
このように補色で混色をしていくと
先ほどお話しした、「彩度」を調整することができるのです。

 

最後に「明度」
明度は明るさの度合いです。
明度を高くすれば白に近づき、
明度を低くすれば黒に近づきます。
よく、「彩度を下げるには黒を混ぜるんですか?」と聞かれますが、
黒を混ぜても明度が下がるだけなので、
綺麗な深みのあるくすみは出せないのです。
先ほどお話ししたように彩度を下げる時は補色を、
明度だけを下げる場合は黒と覚える方がいいでしょう。
では、明度は絵を描く際どのように使うのでしょう?
答えは「コントラスト」です。
明度が一定の場合、コントラストが低く全体にまとまりが出て、
明度差が大きい場合、コントラストが高くメリハリのある絵になります。
静謐な印象の絵でしたら、
コントラストが低い方が幻想的で好まれるかと思いますが、
絵本は特に迫力のある画面作りも大切になってきます。
見てほしい部分、引っ込んでほしい部分の
明度差をわざと変えることによって読者の目線を
誘導できるような画面に仕上げることもできるのです。

 

明度表

 

黄色の明度表です。
左縦一列が無彩色で
右に行くにつれて黄色が濃くなっていっています。
一番下の一列は明度が低く黒に近くなっていて
上に行くほど明度は上がり一番上は
白から純粋な黄色へのグラデーションになっています。
見ていただいたらわかるように明度のみ下げると
だんだん黒が強くなっていきます。
明度のみでしたらこのように黒を混ぜて作ることはできますが、
少し色が平坦になりすぎるので、
深みを出したい場合は黒の代わりに暗めの補色を混ぜてあげるといいでしょう。

以上が色相、彩度、明度の違いです。

簡単にまとめると

色相=赤、青、黄、などの色の違い
彩度=鮮やかさ
明度=明るさ

となります。

色を構成する要素を理解するだけでも、
混色は格段と考えやすくなります。
前半で話した、マゼンタ、ブルー、イエローの混色方法は
またいずれお話ししようと思います。

私は、色について詳しく勉強をしたわけではなく、
自分で数多く混色することによって
色の関係性について理解できるようになりました。
色は画材によっても現れ方が全然違います。
混色の上達方法はいかに色に触れるかだと思うので
みなさんもたくさんの色に触れて混色を楽しんでくださいね。

 

 

生川 彩

生川 彩
Profile

2011 ギャラリー葉「ずーたの招待状」
2013 神戸芸術工科大学デザイン部
   ビジュアルデザイン学科絵本コース卒業
2013 ギャラリー葉「ず ーたのおもちゃの箱」
2014 ギャラリー葉「ずーた&M&Nのおかしの国」
2015 ギャラリー 葉「ものがたり展」

Message
絵本は自由で楽しい世界です。
最初は不安に感じることも多いかと思いますが、不安がわくわくに変わるよう制作の経験を生かし、
共に考えアドバイスしていきます。
自分の頭の中だけで描いていたストーリーやキャラクターが動きだし一冊の本になっていく達成感は
とても楽しいですよ。
個人の"やりたいこと"を大事にし、絵に親しみ楽しんで制作していきましょう!
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