アクリル・アクリルガッシュの違いについて | 絵本コース | アートスクール大阪 ブログ

アートスクール大阪・絵本コースです。

 

今回は絵本コースの生徒さんにもよく聞かれる、アクリル絵具とアクリルガッシュの違いについてお話します。

せっかくなので、簡単にアクリル絵具の歴史についても紹介します。

アクリル絵具はまだ歴史の浅い画材で、1920〜30年代頃メキシコ壁画運動により、屋外で大画面に使用できるような耐久性の高い絵具が必要となり、1940年後半頃に溶剤系のアクリル絵具が誕生しました。この頃のアクリル絵具はシンナーなどの溶剤で絵具を溶かし描画するようなものだったので、使いにくく危険性もあったことから、1955年に現在絵本コースでも使っているような水で溶かして使う、水性のアクリル絵具が開発されました。
水性のアクリル絵具は大変人気ではあったのですが、当時ポスターカラーなどマットな質感に慣れていたデザイナーやイラストレーターにはアクリル絵具特有の艶感や透明感が好まれませんでした。
そのため、デザイナーやイラストレーターに好まれるような、マットな質感と不透明性をもつ絵具が後に開発されました。それが、アクリルガッシュです。

この歴史からわかるように、アクリル絵具は外で描く目的として作られたため、耐水性であり、耐久性が高く、透明感のある画材となります。
一方アクリルガッシュも耐水性ですが、アクリル絵具とは違い、マットな質感と不透明性、発色の良さが特徴です。

 

では、実際に描いてみて違いはどう出るのでしょうか?

まず、アクリル絵具について。

透明感があり下の色を生かした作画ができます。絵具が乾くと少し濃くなるのも特徴です。(色によって透明度、色の変化は異なります。) アクリルガッシュに比べると筆跡やムラが残りやすいので、偶発的な模様を作れたりと、深みのある作画もしやすいです。付着力も強いので木材、コンクリート、ガラス、布など多様な素材にも描けますし、メディウムを混ぜることによって耐久性も上げることもできます。アクリル樹脂が多いため柔軟性があり厚塗りをしてもヒビ割れることはなく、ビニールのような艶のある作画が出来ます。イラストのタイプとしては淡い水彩画のようなイラストから、油絵のような濃厚なイラストまで幅広い表現が可能です。デメリットとしては、独特の艶がある為、マットで均一な画面を作りたい場合アクリル絵具は向きません。(メディウムを使えば可能です。)

こちらの画像は、濃い色から厚めに塗っています。
ビリジアン→マゼンタ→イエローの順番です。透明度が高いため下地の色がよく出ています。

 

こちらの画像は絵具を薄く塗ったものです。色によって筆跡がよく残っています。

次に、アクリルガッシュについて。

アクリルガッシュは均一でマットな作画を得意としているので、筆跡が残りにくいのが特徴です。
アクリル絵具よりも顔料が多く使われているため発色もいいです。濡れている状態では沈んだ色合いでも乾くと鮮やかに発色します。
質感としてはアクリル絵具のような艶がある画面ではなく粉っぽい印象です。
不透明で隠蔽率も高いので下の色に影響されにくく、失敗を恐れずどんどん描いていくことが可能です。
イラストのタイプとしては平面的なイラストやデザイン画が向いているでしょう。
デメリットとして、アクリルガッシュはアクリル絵具と違ってアクリル樹脂が少ないため柔軟性も低く、厚塗りすると割れることもあります。丸めたり折り曲げたりすることでも画面が割れることがあるので持ち運びの際注意が必要です。
耐久性、耐光性についてもアクリル絵具よりは劣るので、屋外展示や日当たりの良い所に置いておくことも避けたほうが良いでしょう。

こちらも、アクリル絵具と同じように濃い色から厚めに塗っています。
ビリジアン→マゼンタ→イエローの順番です。アクリル絵具に比べ隠蔽率が高いことがわかります。

こちらも、薄塗りで塗ったものです。アクリル絵具と比べ筆跡はほとんど目立ちません。

絵本コースでは同じ画面でアクリル絵具・アクリルガッシュを使い、描き心地の違いがどう現れるのか自由に探ってもらってから、アクリル絵具・アクリルガッシュの教材で改めてアクリル絵具・アクリルガッシュの色の乗り方の違い、5種類ほどのテクスチュアジェルを使い下地をつけた状態で描いた時との違いなどを学んでもらっています。
アクリル絵具・アクリルガッシュは上記の性質ではありますが、描き方、メディウムの併用、他の画材との組み合わせ次第でも様々な表現ができる画材です。
ぜひ、自分で触って自分ならではの描き方を見つけてみてくださいね。

(上記2枚の画像は、クリックして、画像を大きくしてみることが出来ます。)

 

 

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