知ってる?知らない?マンガ用語あれこれその3

こんにちは。マンガコースです。
今回のブログは前回前々回に引き続き、マンガを描く人は知っていても、描かない人は知らない(かもしれない)マンガ業界で使われている用語などを紹介します。マンガ業界特有のものもあればそうでないものも色々あります。思いつくまま順不同で掲載。今回は出版や編集部関係中心に書いていこうと思います。
個人的な解釈なので、他の意味で使う時があるものもありますが、ご容赦ください…。
これを全部知ってるあなたはマンガ通!かも!?

【アシスタント(チーフアシ デジアシ 在宅アシ プロアシ)】

マンガを描く時に、主に作画面で補助してくれるスタッフの事。略し方は「アシ」。
消しゴムかけなどの簡単なものから、背景作画(下描きから仕上げまで)やモブなどの人物作画まで、任される範囲はアシスタントの技術と作家の先生による。デビュー目指して投稿中の人や、デビュー済みの新人作家などがなることが多い。

チーフアシは、複数いるアシスタントのまとめ役。作品作りのブレインになったり、マネージャー的な管理を行う人を指すこともある。

 

デジアシは、デジタル作画でのアシスタントの事。デジタル作画の漫画家さんが増えたので、現在はデジアシがかなり多い。

在宅アシは、作家が用意した場所(自宅や仕事場)には行かず、アシスタント自身の自宅などで作業をするアシスタントの事。デジアシの場合、在宅が多い。

プロアシは、デビュー前の投稿者や新人作家とは違い、アシスタントすることをメインの仕事としている人の事。人気作家の専属アシだったり、フリーで何人もの作家さんを掛け持ちしている人もいる。技術力が高い。雇う側の支払う額も高めで、人によっては一般のサラリーマンより稼ぐことも出来る。

【プロダクション】

ある一定以上を稼ぐ作家が会社の形態(法人化)にしたもの。節税対策のメリットがある。プロダクション名を表に出す人もいれば、出していないけれどプロダクション化している人もいる。

【編プロ】

編集プロダクションの略。マンガを出している出版社の主なところは、本を出すだけでなくその本を作るための編集部を設けていることが多いが、編プロは、その編集部分のみの仕事(企画・編集など)を行っている。大手の出版社から委託されることも多い。

【投稿】

商業誌でマンガ家としてデビューするためには色んな方法があるが、一番ポピュラーな方法が出版社が主催している「マンガ賞に応募=投稿する」事である。賞の開催頻度は出版社や雑誌によって異なるが、毎月開催されているものより、年に数回しか開催されない賞の方が規模が大きく、デビューできる賞を受賞する人が多い。

コンクールと違い、出版社が主催するマンガ賞は「プロの漫画家になるための試験」のようなものなので、上位入賞(デビューできると決められた賞)を受賞した場合は、その出版社でデビューするのが普通なので、いわゆる『コンクール荒らし』的なことは基本的には出来ない。

【二重投稿】

賞に投稿する場合、一度投稿した作品は原則他の賞に投稿することは出来ない。もし投稿した場合は『二重投稿』となり、受賞していても取り消しになる場合がある。

ただし応募規定で「他誌に投稿したものでもOK」と書かれている場合もあるので、その場合は二重投稿とはならない。現在はそのようなリトライ賞を設けているマンガ賞も多い。
しかしそのような場合でも同じ作品を同時期に違う賞に投稿することは基本的には出来ない。あくまで結果が出てからのみ可能である。

【持ち込み】

賞に応募する場合同時期に同じ作品を複数の賞に投稿は出来ないが、持ち込みではそれが可能。出版社に直接出向いて見てもらう持ち込みと、ネット上のやり取りで見てもらうオンライン持ち込み(WEB持ち込み)や、イベント会場などで開催される出張編集部(後述)などがある。
持ち込みだと、受賞レベルではない作品でも担当編集者が付く場合もある。(投稿の場合は基本的に何かの賞を受賞していなければ、担当が付くことはあまりない。)

持ち込みの場合は賞に投稿する時にもらえる批評よりも詳しく返答してもらえ、また、自身がどこに合っているか悩んでいる場合は各編集部からの返事を見て、合っているところを決めることもできるのでメリットが多い。
ただし投稿と違って作品を見てくれる編集者は一人の場合が多いため、自分の作品が見てくれる人に合わない場合は、編集部の全体の評価よりも低くなってしまうこともある。

【担当】

商業誌でマンガを作る場合、アイデアやプロット、ネームの段階からアドバイスなどをして、マンガ制作を手伝ってくれる編集者がつく。その人を「担当」と呼ぶ。デビュー前でも、賞に応募したり持ち込みした時に担当が付くことがあり、その場合、投稿作品であってもプロットやネームの段階からアドバイスしてもらえる。

【打ち合わせ】

作品作りの際、担当編集者とどういった作品にしていくかを相談すること。企画・アイデア出しの段階から行ったり、プロットやネームなどを元に修正・変更の指示をもらうことを指したりもする。打ち合わせ自体は直接会って行ったり、電話やメールなどで行ったり、人それぞれ。

【二次創作】

既存の作品のパロディ作品の事。商業誌に投稿する場合は二次創作の作品は投稿できないことがほとんどである。
二次創作の作品を同人誌として作成し、即売会や電子書籍として販売して生計を立てている人もいる。

【イベント(同人誌即売会)】

自分で作った作品を販売する場所。オリジナル作品はもちろん、二次創作も販売することが可能。イベントには色々種類があり、オリジナル作品のみ販売できるイベントや、コミケと呼ばれる同人誌即売会最大規模のイベントもある。現在ではネット上でイベントを開き、作品を販売できるものもある。

【出張編集部】

色んな出版社の編集部の編集者が、イベント会場などで直接作品を批評してくれる。規模や開催場所によって参加編集部は変わってくるが、紙媒体の雑誌を持たないWEB系編集部なども複数参加していることがある。

同人誌即売会で行われている出張編集部の場合は、オリジナル作品だけでなく二次創作の同人誌でも批評してくれるため、オリジナル作品を描いたことがない人でもプロの編集者に自分の作品を見てもらえるいい機会になる。そこで担当編集者がついて商業誌デビューすることもある。

【スカウト】

同人誌即売会やSNSなどで作品を発表している場合、編集者の方から声をかけられる場合がある。それを『スカウト』という。その出版社での作品発表・デビューのためにその編集者と一緒に新しく作品を作っていくためにスカウトされる場合もあれば、発表している作品の書籍化のみの目的で声をかけられることもある。

【読み切り】

1話完結のお話の事。投稿作品の場合は、基本はこの読み切り作品を投稿する。受賞後デビューした後もしばらくは読み切り作品を制作することでマンガ力を上げていくことが多い。その読み切り作品が面白ければ、続編、もしくはその読み切りをプロトタイプとした連載に繋がることもある。

【コンペ】

商業誌の場合、デビューできる賞をもらってもすぐに作品が掲載されるのではなく、「どの作品を掲載するか」という会議を経てから掲載を決定することが一般的。その会議を『コンペ』という。特に紙雑誌の場合誌面に限りがあるため、プロットやネーム段階でコンペにかけて厳選し、そこを通過した作品(掲載が決定した作品)のみが、完成原稿の作成に進むことになる。(完成原稿でコンペにかける場合もある。)

デビューできる賞をもらってもこのコンペがなかなか通らず、結局一度も作品が掲載されないまま辞めてしまう作家も少なくない。また、連載に関しても「連載候補作のコンペ」で決定されることもあり、その場合は3話程度のネームを描いて出すこともある。

【短期集中連載】

デビューすぐの新人はいきなり長編連載を始めることは少なく、まずは短めの回数の連載から始めることが多い。ジャンルや雑誌によるが3~10話程度の連載になることが多い。その連載作品が面白かったりアンケートが良ければ、そのまま長期連載へと移行することもある。

【打ち切り】

短期連載などで最初から全何話か決まっているものもあるが、長期連載を見据えて話数が決まっていない連載もある。(もしくは、マンガ家の方には短期連載の予定とは伝えているが、アンケートなどによって連載話数をどんどん伸ばしていくつもりがある場合、読者向けには「短期集中連載」と銘打たない場合も含む。)しかし、人気や売れ行きなどによって、作者が意図しない話数までで連載が終了させられる場合がある。それを『打ち切り』という。

打ち切りになった作品でも面白い作品は多数あり、連載中は評価されなくても終了後に評価されることもあり、その場合打ち切りになった作品でも続編が描かれる場合もある。

【GW進行・お盆進行・年末進行】

GWやお盆、年末年始など、長期休暇がある時期、印刷所などもお休みしてしまうが雑誌の発売はあるため、発売日に出せるように納品など含め、編集作業が前倒しで行われる。それをその長期休みの時期に合わせて『○○進行』と呼ぶ。もちろんマンガ家の方もこの前倒し作業に〆切を合わせる必要があるため、通常の時期より〆切が短くなったり忙しくなることが多い。

【著作権】

マンガを描いた時、商業誌などに掲載されるかどうかは関係なく、その作品には作者に対して『著作権』が発生する。これは作者に無断でその作品を掲載・出版などできない権利である。これはマンガに限らず小説や映画など、あらゆる著作物に発生する。
著作権は2021年現在、作者の死後70年まで(映画の場合は公表翌年1月1日から)存続されることになっている。

【出版権】

マンガの著作権は作者にあるが、商業誌の場合、その作品を出版する権利は出版社と契約することで発生する。紙媒体の雑誌などにマンガが掲載される時は契約は交わさない事が多いが、コミックスとして出版したり、電子媒体で掲載される場合などには契約書を交わす。

【電子書籍】

紙の本ではなく、スマホやパソコンなどのデジタル媒体で読める本。紙の本のように見開き単位で読めるものもあれば、1ページ単位、またはコマ単位で読む形式のものがある。
コミックスの場合、データ自体は本文のみではなく、カバーや帯、背表紙や見返し、カバー下などもきちんと収録されていることが多い。カバーイラストが変更になった場合、新旧両方のデータを収録していることもある。

【原稿料】

マンガの原稿1枚の価格。出版社やジャンル、マンガ家のキャリアによって数千円から数万円まで値段はまちまち。
「原稿」という商品なので、値段に関係なく別途消費税も支払われる。(消費税込み価格での設定の場合もある。)

【描き下ろし】

新しく描いた作品の事。
コミックス出版の際に描き下ろしたものは、カバーイラストや本文作品に関わらず、原稿料が出ないことがほとんど。

【初版・重版】

紙媒体のコミックスの場合、出版社の判断で初回に販売する冊数(部数)を決定する。その時に発行されたコミックスを『初版』という。初版の部数では足りなくなったり、足りなくなると判断された場合は、追加でコミックスを発行する。それを『重版』という。まれに予約などで初版部数では不足すると判断されると、販売前でも重版が決定する場合もある。

【印税(ロイヤリティ)】

紙媒体のコミックスの場合は、一般的にコミックスの値段の5~10%が印税として作者に支払われる。(発行部数に応じて変更される場合もある。)紙媒体のコミックスは、発行した部数全部が売れるか売れないかに関わらず、部数に対して印税が支払われる。

電子書籍の場合は、出版社に入ってきた売り上げの何%と設定されていることが多い。作者が個人で直接販売する形態の場合は印税率はかなり高くなる。紙媒体のコミックスと違い、実売分に対して印税が発生することが多い。

【源泉徴収】

原稿料や印税が出版社から支払われる際、あらかじめその内の10%が所得税などとして天引きされている。それが『源泉徴収』である。
ただしマンガ制作にかかった費用(経費)をその収入から差し引いたり、そもそも原稿料や印税がそれほどない場合は、確定申告をすれば戻ってくる(還付される)場合もある。
マンガ賞などで高額の賞金をもらった場合も源泉徴収されているため、実際にもらえる賞金金額は提示されている金額より低くなる。(もちろんこれも確定申告を行えば源泉徴収分が多ければ還付される。)

 

以上、『マンガ用語あれこれ』でした!書き洩らしたこともまだまだありますが、キリがなさそうなのでこの辺で…(笑)
それでは、3回に渡り、お付き合いありがとうございました♪これらの用語を知ることで、マンガに対して興味を持ってもらえればうれしいです!

知ってる?知らない?マンガ用語あれこれその2~画材・技法編~
知ってる?知らない?マンガ用語あれこれその1

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社大学経済学部卒業
大学在学中に漫画家デビュー。
以降、読み切り・連載作品を発表、コミックス出版を重ねる。
現在はフリーのマンガ家として活動中。
Message
小さい頃から、マンガを描くのも読むのも大好きで、今は趣味も仕事もマンガという大人になりました(笑) 特に読む方はジャンル問わずです。
好きな気持ちとやる気は、マンガ制作の大きな力になります。初めての方もレベルアップしたい方も、ぜひ一緒に頑張っていきましょう!
ArtWorks
講師インタビュー

 

マンガコースのコース紹介はこちらから

マンガのコース料金はこちらから

マンガのコースの無料体験ってどんなことするの?はこちらから

マンガのコース受講生のオリジナル漫画はこちらから