マンガのデジタル作画でよくあるトラブルその2

こんにちは。マンガコースです。
少し間が空きましたが、
デジタルモノクロマンガ作画初心者の方が
良く遭遇してしまうトラブルを今回もご紹介したいと思います。

 教室ではマンガ制作ソフト(株)セルシスの
「CLIP STUDIO PAINT(以降略して『クリスタ』と表記)」を
メインで使用していますので、
そのソフトに限った出来事などもありますが、
もしご自身が使われて戸惑ってしまったことがあれば、
解決の参考になればうれしいです!
それでは、今回は前回ご紹介しきれなかった、

◆勝手にツールが変化している
◆選択範囲が思うようにとれない
◆ウインドウの表示や位置が変更される・ウインドウが消える
◆レイヤー分けした設定のままで、ファイルを保存できない
◆プリントすると印刷されていないor画面に表示されているものと違うところがある

というトラブルについて紹介したいと思います。

◆勝手にツールが変化している

 自分では選んだつもりのないツールがいきなり選択されて戸惑う方がおられます。パソコンやソフト自体の不具合でなければ、自分でも気が付かないうちにそのツールを選択していることがほとんどです。良くあるパターンをいくつか挙げてみます。

・タッチ機能のあるペンタブの場合は、知らない間に手で触ってしまっている
  ⇒手袋などをして触れないようにするか、タッチ機能をOFFにする
・ショートカットキーの押し間違い、もしくはキーを無意識に押している
  ⇒キーの位置をしっかり覚える、余計なキーを押さないように指を浮かせたり、置く位置を変える
・ペンのサイドスイッチに何かのキーが割り当てられていて、それを無意識に押している
  ⇒持ち方を変えるか、サイドスイッチの割り当てキーを変更するか、使うことがないのであればそもそも割り当てないように変更する

 自分では触っていないつもりでも、デジタルに慣れていない方は、意外にいろんなところを触っていることが多いです。慣れればそんなこともなくなりますので、少しずつ気を付けていきましょう。

◆選択範囲が思うようにとれない

 選択範囲を取ろうとした時、関係ないところまで選択されたり、逆に全く取れないことなどがあります。その原因は色々あります。クリスタを使った時に起こる出来事中心で例を上げてみます。

・『隙間閉じ』の数値が適切でない
・『隣接ピクセルをたどる』にチェックが入っていない
(これがONになっていないと、クリックした部分と同じ色の部分全てを選んでしまいます)
・選択範囲を決める『参照レイヤー』が適切ではない(違うレイヤーを選んでいたり、複数参照出来る『他レイヤーを参照』になっていなかったり…)
・レイヤー表示が100%になっておらず、かつ『色の誤差』の数値が大きい
・スキャンした線画などで『輝度を透明度に変換』の処理をしていない状態で消しゴムをかけたレイヤーがあり、白と透明の箇所が混在している

 使っていくうちに自分にあった数値ややり方の設定を見つけられるので、思ったように出来ない時は上記の設定を見直してみて下さいね。

◆ウインドウの表示や位置が変更される・ウインドウが消える

 これもパソコンやソフトの不具合でなければ、勝手にツールが変化した時と同様、無意識に何かを触っていることが多いです。ウインドウの状態を元に戻そうと触りすぎて余計にどうしようもなくなった時は、クリスタの場合、ウインドウ表示を初期設定に戻して(クリスタでは『ウインドウ⇒ワークスペース⇒基本レイアウトに戻す』)から、もう一度並べ直してみましょう。自分の気に入っているレイアウトを登録することもできますので、よくやってしまう方は登録しておいた方が楽かもしれません。他のソフトの場合は、とりあえず一旦すべてのウインドウを非表示にした後、出したいウインドウを順次表示設定に変更して、お目当てのウインドウがすべて表示されてから並べ変えるなどしてみましょう。

◆レイヤー分けした設定のままで、ファイルを保存できない

 せっかくレイヤー分けして作業しても、保存して改めて開くとレイヤーが統合されていた…という場合があります。これは保存時に、レイヤー設定を維持できる形式で保存していなかったことが原因です。新規作成の場合はキャンバス設定から始めるので、たいていそのソフト特有のファイル形式になっているので問題ないのですが、スキャンした画像にそのまま作業をした場合、jpgなどの形式になっていることがあります。レイヤーを統合してしまうと後で再度開いた時に作業をしづらくなってしまうので、保存するときはレイヤー機能が保持できる形式(psdやclip形式など)で保存するように気を付けましょう。また、クリスタで作成したデータをpsd形式で保存した場合、テキストレイヤーなど、別のソフトでも使える機能でも互換性がなく、別のソフトで開いた時にラスタライズされて画像レイヤーになっていた…という場合もあるので、注意しましょう。
逆に、レイヤーを統合した状態でデータの書き出しをしなくてはならない場合は、同じデータ形式の場合はデータを別名で保存(名前を変えて複製を作る)して統合してから保存したり、別名での保存や書き出しの際は、レイヤー機能を維持できないファイル形式(jpgなど)を選べば、元ファイルのレイヤーを統合することなく、投稿したり印刷所に出したりするのに適したレイヤー状態(すべてを統合)のファイルを作ることが出来ます。

◆プリントすると、印刷されていないor画面で表示されているものと違うところがある

 PC画面上で見た時はちゃんと表示されているのに、実際プリントしてみると、その通りに印刷できていないことがあります。もちろんソフト側の出力時の不具合という可能性もありますが、そうでないこともあります。原因も色々あります。

◇印刷されていない(白い)場合

【グレースケールレイヤーにグレーで描画していた】

グレーで描画しているのに、印刷設定で『モノクロ二諧調(閾値)』を選択したため、グレーの濃度が50%以下の部分が真っ白(印刷されない)になってしまったパターンです。グラデーションツールを使った時によくやってしまう方が多いです。レイヤー設定でグレー部分をトーン化するか、印刷設定で『モノクロ二諧調(閾値)』以外を選択するようにしましょう。

【下描きレイヤーを使っていた】

クリスタの場合印刷設定で、下描きレイヤーを出力するかどうかを選択できる項目があります。もし下描きレイヤーに描画したものを出力(印刷)したい場合は、下描きレイヤーを出力する方にチェックしておきましょう。

【細すぎる線で描画していた】

繊細な絵を描きたくてとても細い線で描いた場合、プリンターの性能によっては細すぎて印刷に出ない時があります。特に、データ原稿のサイズよりかなり小さくプリントする(B4原稿に描いたものを、ハガキサイズに縮小するなど)場合、細い線も縮小されるため、再現できないことが意外にあるので気をつけましょう。

【白い四角などで画像が一部欠けている】

これはデータ書き出し時の不具合の可能性が高いので、その場合は複数ページを一気に書き出さず、一枚ずつ書き出し・プリントしてみて下さい。それで改善される場合があります。

 

◇表示画面と違う画面になっている場合

【トーンの重ね貼りが出来ていない】

同じトーンを重ね貼りすると、画面上ではちゃんと重ねたように濃く表示されるのですが、印刷するとそうなっていない時があります。これはデジタル上だと重ね貼りは『ぴったり柄を重ねて貼っている』状態になっているためです。重ね貼りをした時は、そのレイヤーをほんの少しだけ移動して、トーンの柄をずらしておけば重ね貼りの効果が出ます。アミ点のトーンの場合は、ドット一つ一つが判別できるくらいに拡大表示してやれば、トーンのズレが確認しやすくなります。クリスタの場合、『トーンの貼っている範囲はずらさずに、トーンの柄だけを移動』が出来るので、それでずらしてあげましょう。

【プリントするとトーンがアミ点ではなく、とても細かい粒子の集合体になっている】

グレースケールでプリントした際、トーンのつもりで貼った画像素材が、グレーで描画されていると、そうなります。原稿データの最終形態が、グレースケールOKの印刷物や電子書籍などモニターで見るものであれば気にする必要はありませんが、そうでない場合は汚く出てしまう可能性があります。レイヤーの設定でアミ点化するようにしてあげましょう。印刷やデータの書き出しの時に『トーン化する』という項目を選ぶこともできますが、アンチエイリアスをかけた状態で描いた線などのグレー部分までトーン化されて線がにじんだように見える可能性があるので、あまりお勧めはできません。

【レイヤーの不透明度を100%以外にしている】

モノクロのレイヤーで、アミ点化もしているのに、プリントすると画面がおかしい…。そういう時は、レイヤーの不透明度が100%以外になっていないか確認していてください。モノクロのレイヤーでも100%以外では、グレースケールと同様の効果になってしまいます。よくあるのは、薄い色の画面にしたくて、カラー画作成のような感じでレイヤーの不透明度を下げて、画面の表示上薄く見えるようにしたため、プリントするとおかしい表示になってしまうパターンです。特に、薄いグラデーションに変更したいときにやってしまう方が多いようです。薄いグラデーションにするのであれば、グラデーション設定自体を変更して、100%の不透明度でも薄く見えるようにしましょう。
モノクロ原稿作成時は、くれぐれもレイヤーの不透明度は100%以外にはしないように気をつけて下さいね。

【重ね貼りしていないのにトーンがモアレたように汚くなっている】

これはプリンターの精度によって、そうなる時があります。グラデーションで、よく見られる現象です。画面上でドット一つ一つが分かるくらいにアップにした時にモアレていなければ問題ありませんが、画像によっては印刷するときれいに表現できない時もあります。その時はアミ点の線数を小さくして、アミ点を少し荒めにすることで、多少は改善すると思います。

 

 

 

 他にも印刷して分かる色々なトラブルがあるかと思いますが、これも慣れてくれば『白黒原稿を作成する時に大丈夫なレイヤー』が何かは分かってきます。「せっかくデジタルで作成しているのにわざわざプリントアウトして紙を使うのはもったいない!」と思われるかもしれませんが、画面だけで見ている時は気付かなかったミスは意外にあります。特に初心者の方はモニターだけでは見過ごしてしまうことが多いので、データの仕上がりは必ずプリントアウトして確認するように心掛けましょう。

 

 

 教室でよく見かける、モノクロ原稿作成時の初心者によくあるトラブルの代表的なものはこんなところかな?と思います。

 もちろん今回紹介させていただいたトラブル以外にも、例えばパソコン自体のトラブルなども色々あるかと思います。パソコンにあまり強くない方は、とにかく作業中はマメに保存+複数保存(データを1つしか保存していないと、何かのトラブルでそれが駄目になった時に困るので、例えばパソコン本体+USBメモリやクラウド上など、予備的に違う場所で保存しておくと安心です。)を心掛け、トラブルが起きた時はパソコンに詳しい友人を頼ったり、ネットで同じような症状で困っていた方の解決方法を検索するなどして、少しずつデジタル作画に慣れていっていただければと思います。そうやって何作か描く内に、自分が使う機能のところだけでもきちんと対処できるようになっていくはずです。慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、慣れればデジタルは時短になりますし、アナログではできない表現方法も使うことが出来ます。デジタル作画に興味のある方は、ぜひ頑張ってみて下さいね!

 

 

 

 

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社大学経済学部卒業
大学在学中に漫画家デビュー。
以降、読み切り・連載作品を発表、コミックス出版を重ねる。
現在はフリーのマンガ家として活動中。
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小さい頃から、マンガを描くのも読むのも大好きで、今は趣味も仕事もマンガという大人になりました(笑) 特に読む方はジャンル問わずです。
好きな気持ちとやる気は、マンガ制作の大きな力になります。初めての方もレベルアップしたい方も、ぜひ一緒に頑張っていきましょう!
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